2018年11月、株式会社サイバーエージェントは「2018年の動画広告市場は1,843億円で前年比134%になる見通し」という調査結果を発表しました。さらに、2020年には2,900億円、2024年には4,957億円に達すると予測しています。いまや多くの方にとって、テレビと同様に日常的な習慣となりつつあるネット動画。それに合わせて、動画を活用した企業広告、プロモーション活動が今以上に増えていくと思われます。そこで重要になるのが、動画の効果測定です。今回は動画共有の代表的なサービスであるYouTubeが提供している、効果測定を目的としたAnalytics APIをはじめ、3つのAPIを紹介します。
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YouTubeの効果測定を管理する「YouTube Reporting API」
企業がマーケティングに動画広告を活用する際に、その動画が、誰に、いつ、どこで、どれぐらい閲覧されているかを確認することは費用対効果を見るためにも欠かせません。YouTubeでは、そうしたデータを管理者が確認できるようにYouTube Analyticsを用意しています。自社が公開した動画の視聴回数、時間、カードのクリック率などに加えて、視聴したユーザーの地域、性別、年齢などを確認できます。
もちろん、これだけでも効果測定は十分に可能ですが、企業として動画を活用する以上、そのデータを基にもっと詳細な解析をしたり、ほかのデータと組み合わせたりして、より効果的に活用していきたいものです。そこでYouTube Analyticsで得たデータをダウンロードし、Web上だけではなくExcelのようなアプリケーションで処理できるようにするAPIがYouTube Reporting APIです。
YouTube Reporting APIは、ひとつの動画に対して、「視聴回数」や「いいね」の数、「プレイリストに入れられた数」などのデータを、日付を指定して取得します。つまり、YouTube Analyticsのデータを基に、さらに詳細なデータ解析を行えるようになります。
YouTube Reporting APIは、YouTube AnalyticsからデータをダウンロードできるYouTube Analytics APIの後継版として提供されているものです。従来のYouTube Analytics APIではできなかった「全データセットの一括ダウンロード」といったことが可能になり、何度もAPIにアクセスする必要がなくなっています。
ただし、注意しなくてはいけない点もあります。それは、YouTube Reporting APIから取得したレポートが、ユーザー インターフェースに公開された60日後に削除されるようになった点です(2018年5月以降)。YouTube Reporting API内の過去データも作成後30日間までしか利用できないので、削除した動画のデータは何かしらの方法で保存しておく必要があります。
Webサイトに埋め込んだ動画を制御する「YouTube Player API」
作成した動画をYouTubeで公開するだけでなく、自社のWebサイトやブログにも掲載する場合があると思います。このとき、単純に「埋め込みコード」をHTMLに貼り付けるだけでは、次のような問題が発生します。
- 動画再生終了後に関連動画として、自社には関係のない動画(もしくは同業他社の動画)が表示されてしまう
- 連続して視聴してもらいたい動画があったとしても、それが必ずしも関連動画に表示されるとは限らない
- 再生時の音量をコントロールできないため、急に大きな音で再生され、驚いたユーザーが離脱してしまう恐れがある
- 動画を掲載していても、再生ボタンを押してもらえない可能性がある
こうした問題点があるようでは、自社のWebサイトで動画を公開することが、かえってマイナスプロモーションになってしまう恐れがあります。そこで、これらの問題点を解決するためにYouTube Player APIというAPIも用意されています。
このAPIを使うと、関連動画を表示しないで、自分たちが作成したプレイリストを再生できるようになります。また、訪問時に「自動で動画を再生するが、音量はミュートにする」といった設定も行えるようになります。長時間動画の場合は、「決まった時間だけ再生したら自動的に止める」といったことも可能です。
これらの機能の多くは、YouTube上で取得した埋め込みタグにオプションを追加することでも実現できます。しかし、動画の数が増えてくると、その都度オプションの追加が必要になり、大きな手間がかかります。そうした手間を軽減し、業務の効率化を実現してくれるのがYouTube Player APIの特徴です。「本当に見せたい動画」だけを見せられるようになるため、プロモーション効果はさらに高まります。
ただし、動画のオートプレイは、それを必要としないユーザーにとって離脱の要因になってしまう場合もあります。そこで、すべての動画をオートプレイにするのではなく、どうしても見せたいものだけに的を絞ってオートプレイにするといったように、動画の再生方法に関して十分に検討してから仕様を決めるようにしましょう。
YouTube上のチャンネルや動画などを操作する「YouTube Data API」
動画をプロモーションツールとして利用する場合、自社の動画に対する効果測定は極めて重要な検討項目になります。ただし、これだけでは本当の意味での効果測定にはなりません。なぜなら、比較対象がなく、「自社の数字が多いのか?少ないのか?」を判断できないからです。このような場合に必要となるのが競合調査です。
競合調査はできるだけ多くのデータを取得することがポイントとなります。多ければ多いほど客観性が生まれ、自社の動画がどれぐらいの効果を発揮しているのかが見えやすくなります。このとき、同業他社のYouTubeチャンネルを一つひとつ回って数字を拾ってくるようでは、手間がかかり過ぎてしまい現実的ではありません。そこで、多くのYouTubeチャンネルのデータを一括取得できるYouTube Data APIを活用します。
YouTube Data APIを使って取得できるデータは、チャンネル情報/再生リスト情報/再生リスト内の動画情報/動画情報/動画検索結果です。基本的にすべて公開されている情報なので、手作業で取得することも可能ですが、前述したようにAPIを使えば一括取得できるため、大幅な時間短縮につながります。
このAPIを使って取得したデータを自身の動画データと照らし合わせることで、自分たちの動画の広がり具合を客観的に判断できるようになります。Player APIで動画のプロモーション効果を高め、Reporting APIで現状を把握し、Data APIで競合との比較検証を行う。これら3つのAPIを効果的に活用することで、単に動画を作って公開する場合よりも大きな成果を挙げられるようになります。
動画プロモーションが当たり前の時代に、必要不可欠なYouTube API
今回は、YouTubeが提供する3つのAPIを紹介しました。いずれも、動画プロモーションを行う企業にとっては欠かせないものばかりです。本記事の冒頭で「現在の動画広告市場と今後の予測」を紹介しましたが、この予測が実現するならば、ほとんどの企業は「何らかの形で動画をプロモーションに活用すること」が当たり前の時代になります。
以前は、テレビCMを行うような大企業だけが、Webに動画を公開していました。しかし、ほとんどの企業が動画を活用するようになれば、中小企業も大企業と同じ土俵で戦うことになります。そうしたなかで自社の動画を多くのユーザーに届けるには、単純に動画を作成して公開するだけでなく、作成した動画を少しでも見やすくし、効果検証をしっかりと行っていく必要があります。この際に、YouTubeが提供する3つのAPIが大きな助けとなってくれるはずです。
また、Rakuten RapidAPIにも、YouTubeや動画サービスに関するさまざまなAPIが公開されており、YouTubeのダウンロードリンクを取得する「YouTube API」、画像や動画の顔を検出・分析・比較する「KairosAPI」、非同期の動画をキャプチャして管理する「Ziggeo API」など、多くのAPIが提供されています。用途に合わせて目的のAPIを検索してみてはいかがでしょうか。
参考:
- 2018年、国内動画広告の市場調査を実施|サイバーエージェント
- APIリソース|開発者向けYouTube
- Channel Reports|Google Developers
- Rakuten RapidAPI|楽天コミュニケーションズ
- KairosAPI | Rakuten RapidAPI
- YouTube API | Rakuten RapidAPI
- Ziggeo API | Rakuten RapidAPI
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